花うつ

花子28歳独身。パワハラによるうつ病に悩まされ、リストカットにまで追い詰められた。でも、うつ病は必ず治る、私なりの独自の治し方で、うつ病と向き合っています。うつ病に効く食材を使った料理紹介や小説も公開予定です!現在はフリーライターとしても活躍中。お仕事依頼もよろしくお願いいたします。お仕事依頼は、south1989.1322@gmail.com まで!!小説家志望ですので、いつか本を出せたらいいなと言う野望も持っていますw

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【小説連載】スニーカー 12話目

父上は、真紀が言ったことに喜びを感じていた。

あの日、夕飯を食べる前に真紀が東京へ行きたいと言った。

真紀は、何も興味がないと思っていたから、父上はやっと何か見つけたかと嬉しかった。

父上が心の中で笑ったのは、真紀が一生懸命に貯めたお金を、東京へ行くので少しだけ使っても良いかと許可を求めたことだった。

真紀が、定額預金をしていることは知っていた。定額預金について、真紀から最初に相談を受けたのは父上だったからだ。

 

まきがコツコツ貯めたお金だ、使うのも本人の自由なのに真紀は許可を求めたのだ。

相変わらずまじめだなと、自分の娘を誇らしく感じた。

 

ここまで来たら、何か手助けをするべきなんじゃないかと感じていた父上。

しかし、そんな心配は必要なかったと安堵していた。

 

真紀が東京へ行くと言った時に、一つだけ心配事があった。

母上のことだ。

母上は、真紀がすることを過剰に反応して心配していた。真紀の知らないところで、父上に毎日のように、今日の真紀はおかしくなかったか?何か悩みはないのか?など不安になっていた母上。

父上は、真紀の言葉に母上が余計に心配をして反対するのではないかと気にしていた。

せっかく娘が行きたいと興味を持った場所に、行かせてやりたいと父上は強く思ったのだ。

 

母上の反応は、父上には想定外だった。

母上は、「行ってきなさい。」と一言だけ真紀に言ったのだ。

 

これには、母上にも考えがあってのことだった。

母上の中で、心配のほうが強かった。しかし、母上は自分の感情を抑えたのだ。

この半年、娘の幸せだけを祈ってきた母上だ。

 

娘がたった一日東京へ行く。本当なら、29歳の娘が親に許可を取ることではない。でも真紀にとって、たった一日東京に行くだけでも大イベント。

それは真紀自身も分かっていると、母上は思っていた。

だからこそ、真紀自身だって覚悟しているはず。

自分が心配だというだけで、真紀の覚悟をつぶしてはいけない。

母上の、真紀への最大の愛情表現だった。

 

もし自分が感情を抑えることで、真紀が少しでも前へ進めるのなら。新しい世界を見れるのなら。こんなこと、決して苦ではない。

 

真紀が本当に笑えることが、母上の幸せなのだ。

だから、一言だけで真紀を送り出すことに決めたのだ。

 

きっと、真紀が東京へ行く日は、返ってくるまで両親は落ち着かないだろう。ちゃんと帰ってくるだろうか、嫌な思いをしないだろうか。

そんな不安な一日になるだろう。

でも、それでも送り出すのだ。

これが、娘のためにできることだから。

 

続く。