花うつ

花子28歳独身。パワハラによるうつ病に悩まされ、リストカットにまで追い詰められた。でも、うつ病は必ず治る、私なりの独自の治し方で、うつ病と向き合っています。うつ病に効く食材を使った料理紹介や小説も公開予定です!現在はフリーライターとしても活躍中。お仕事依頼もよろしくお願いいたします。お仕事依頼は、south1989.1322@gmail.com まで!!小説家志望ですので、いつか本を出せたらいいなと言う野望も持っていますw

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【小説連載】スニーカー15話目

お巡りさんは、私の気を紛らわそうと沢山、話しかけてくれた。

どこから来たんですか?

この辺には、沢山おいしいお店があるんですよ。

向かっている商店街は、優しい人がいっぱいいます。

東京は、初めてですか?

本が好きなんですか?

など、いろんな話をしてくれた。

お巡りさんが教えてくれたのは、私が向かっている商店街は小さく、あまり知られていないこと。それでも、歴史は長く、商店街の人たちが頑張って存続させようとしていること。

古いけれど、おいしいラーメン屋や居酒屋があり、お巡りさんは常連だということ。

 

そんな話を聞いたら、お腹がさらに空いてきた。

「ここですよ。」

お巡りさんがそう言った先をみると、写真集と同じ入口の商店街。

確かに写真で見るよりも、実際はもっと古かったし小さかった。

でも不思議と、潰れているお店は一つもない。

 

「ありがとうございます。」

私は、お巡りさんに頭を下げた。

「ラーメン屋、ここから右の三軒目です。三浦って店です。この店、この時期だと冷やし中華が美味しいですから。」

ここまで言うのだ。よっぽど、美味しいのだろうと思った。

「はい。ありがとうございます。」

私がそう言うと、お巡りさんは敬礼をして去って行った。

 

ここかぁと感動する前に、本当に私はお腹が減っている。

周っりを見渡すと、生きなれたチェーン店はなさそうだし、お巡りさんが勧めてくれたラーメン屋三浦に行くことにした。

 

店の前に行くと、ちょっと足がすくむ。

だって、明らかに常連じゃないと入れない雰囲気。

しかも、初めてのお店。

どうしようかな...。入れるかなぁ...。

そんなことを思いながらも、お腹は鳴る。

 

「よしっ。」

私は、勇気を出して店の中に入ることにした。

「いらっしゃいませ。一人ですか。」

明るい声で、おばさんが聞いた。

私は、黙って頷いた。

「こちらへどうぞ!」

すると、カウンター席に通してくれた。そして、私は席座りメニューを見た。メニューの色あせ具合と、店の壁の油汚れから、このお店の歴史を私は感じた。カウンターから見える厨房には、頑固そうなおじさん。そして、店内を動き回るおばさん。この二人は、きっと夫婦だろう。

お客が次から次へと入って来るのを見る限り、このお店は愛されていると思う。

 

冷やし中華はメニューに書いていない。

今日は特に暑いから、冷やし中華が食べたと、お巡りさんの話を聞きながら思っていた。

私は店内を見渡した。すると、多分、ずっと貼ってあるのだろう。期間限定と書きながら、ボロボロの紙に冷やし中華800円という字が書いてある。

「すみません...。」

私は、店員さんを呼んだ。

「はーい。」

すると、おばさんがダッシュでこちらに来る。

冷やし中華を。」

私はそう言ったが、もう一つ頼みたい事があった。

それを、この店はしてくれるだろうか...。

「あの...。きゅうりを抜いてもらえませんか。」

私は、きゅうりが苦手。でも、お店で食べる冷やし中華が大好きだ。でも、きゅうりを抜くことをあんまりよく思わない店も多く、家族で中華屋さんに行くときは、父の冷やし中華に私のきゅうりを入れていた。

でも、今日は一人。だから私は、勇気をもって聞いてみたのだ。

 

「いいですよ。じゃぁチャーシューと卵、多めにしときます。お客さん、あんまり見たことないけど旅行?」

おばさんは、笑顔でそう言ってくれた。

「はい。高速バスで△△△県から来ました。」

おばさんの明るさが、私にスムーズに言葉を出させてくれる。

「そう。そんな遠くから、ありがとう。」

嬉しい。このお店、好きだと思った。

しかもチャーシューと卵を多めにしてくれるなんて店、今まで出会ったことがない。

 

しばらくすると、おばさんが冷やし中華を運んでくれる。

カウンター席だから、本当は近くに置いてくれれば私が取りに行くのにと思ったけど、それもこの店の良いところなのだろう。

「はい、冷やし中華。あとこれ、サービス。遠くから来てくれたから。」

そう言って、餃子を置いてくれた。

「ありがとうございます。」

おばさんに軽く頭を下げ、冷やし中華を食べ始めた。

お巡りさんの言ったとおりだった。

それは、市販の冷やし中華とは違って、なんかタレに甘みを感じた。

あと、チャーシューも手作りなのだろう。味にコクがある。

卵もふわふわだった。

それに、驚いたのは餃子。

食べた瞬間に、肉汁があふれる。形が少し不格好なのは、手作りの証拠だ。

私は一心不乱で、食べ続けた。

「ごちそうさまでした。」

と小声で言った。

普段、外でこんなことは言わないのだけれど、本当においしかったから自然と口から出てしまった。

 

「餃子、ありがとうございました。美味しかったです。」

お会計をしてくれたおばさんに、私はそう言った。

「こちらこそ、ありがとう。また、来てね。」

おばさんは、笑顔でそう言ってくれた。

 

店を出て、私はスマホをバッグから取り出す。

食事の写真はあまり撮らないのだけれど、両親に写真を撮って送りたかったと思った。

そんなことを思いながら、私は母に電話をかける。

「もしもし真紀。大丈夫?」

ずっと電話の前で待っていたのだろう。ワンコールの途中で、母は電話に出た。

「うん。お母さん、あのね...。」

私の声は、弾んでいる。

この短い時間で、沢山の優しさに出会ったから。

それを、母に話したときの母の反応が今は気になって仕方ない。

 

続く。